「バ、バカ野郎! そんなんじゃねぇし! 今回の冒険は、さすがの俺も危険かもしれないだけだし!」


私の手を払い除けて、なぜだか照れたようにモジモジとしています。


でも、そういう事なら今日はのぼるはお客さんですね!


「それなら話は別です! いらっしゃいませ! 何にしますか?」


急いでカウンターの内側に入り、ニッコリと笑顔を向けます。


「も、萌え萌えキューン!」


のぼるが変な事を言って悶えました。


魔王には、私のスマイルは効きませんでしたけどね!


「はぁ……はぁ……なんて破壊力の笑顔だ。回復薬を……とりあえず5個貰おうかな」


お、5個も買ってくれるんですね?


いよいよ本格的に冒険に出る雰囲気です!


「じゃあ、50Gになります。大丈夫ですか? 道具袋に入りますか?」


そう言って、回復薬をのぼるに手渡そうとした時でした。
















「おっと、それは俺が頂こう。伝説の勇者のぼるの名を騙る偽者に、道具を売る必要なんてないぜ!」














店の入口に立ち、前髪を手で掻き上げて……山岡さんが、のぼるを指差していたのです。


……いや、回復薬くらい別に誰にでも売ってあげるんですけど。