ブラック企業とか社畜とか、魔王の言葉はわからない事だらけです。


「何言ってるんですか! 一日7食だし、部屋中にロウソクを立てて全部に火を灯すし、グツグツ煮立ったお湯じゃないとお風呂に入れないとか言うし! この道具屋を潰すつもりですか!!」


「ぐぬぬぬぬ……しかしこの生活水準を落とすわけにはいかぬ! 良いだろう、ならばもっともっと働いて借金を返してくれるわっ! おっと、こうしてはおれん。素材を集めに行ってくるぞ!」


そう言い放って、マントをひるがえした魔王は、颯爽と店を飛び出して行きました。


……食事は仕方がないとしても、どうして部屋中にロウソクを立てているのか、不思議でなりません。


少しでも魔王っぽくしようとしているんでしょうかね?


お店の床をホウキで掃きながら、そんな事を考えていた時です。


キィと店のドアが開いて、誰かが入って来たのです。


「あ、いらっしゃいませー」


と、営業スマイルを向けるとそこにいたのは……。













「よ、未来! 来てやったぜ!」













なんだ、のぼるでした。


営業スマイルでも向けて損しましたよ。


顔をしかめて、明らかに嫌そうな顔をしても、のぼるは関係なく店に入って来ました。