そして、魔王は知らないですが、この村には「伝説の勇者のぼる」が二人もいます。


一人はバカで弱くて、そのくせスケベなどうしようもない虚弱体質ののぼる。


もう一人は、聖なる雫で色んな物が祓われて目覚めた、ゴッデス山岡のぼる。


どういうわけか、魔王が店にいる時に二人がやって来た事はありません。


「では未来、わしはマスターに頼まれた素材を集めに行ってくる。店番は任せたぞ」


ブーメランパンツにマントといった変態じみた格好で、バスケットを持って、私を馬鹿にしたような笑みを浮かべます。


「魔王に任されるまでもないです。店番なら、私の方がキャリアが長いんですからね」


全く。


ちょっと魔王だからっていい気にならないでほしいもんです。


魔王なんて私からしたら、まだまだ道具屋としては素人なんですからね!


「ふはははははっ! これは借金を返済する日も近いな! 未来よ、わしの借金は後いくらだ! 言ってみろ!」


どうして借金をしている身でこんなに上からなんでしょうね。


帳簿を取り出して、魔王のページを開いて金額を確認します。


「えーと……回復薬代と三日間の食費、光熱費を合わせると……510Gですかね?」


「な、なにぃっ!? 元よりも増えておるではないか! なんというブラック企業だ! 働けば働くほど借金がかさんで行くとは! 貴様ら……この魔王を社畜にするつもりだな!?」