「おい、貴様……」


山岡さんの身体から手を放して、魔王が声を掛けました。


「むっ、なんだ貴様は……我ら魔族の恨みを晴らすのだ、邪魔は……おや?」


「ほう、魔族の怨念が、この魔王に説教をするとは良い度胸だ。貴様のせいで、熱い水をかけられるわ、その水は臭いわ……許すまじ!!」


「ま、まさか! そのお姿は魔王様!? いや、だが……トレードマークのブーメランパンツを穿いておられない。ズロースを穿いているなんて、魔王様がそんな事を……」


魔王=ブーメランパンツなんですか?


それだけが魔王を認識する材料だなんて、なんだか悲しい気がします。


「あの世で詫びよ! この魔王に、無駄な痛みと悪臭を与えた事を! ぬううううんっ! はぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


凄まじい怒りが、魔力と共に手に集まります。


黒く輝く闇の球体。


解き放たれたそれが、魔族の怨念に向かって放たれました。



「ひ、ひいいいっ! そ、そんなっ! 嘘だぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」



闇の球体が怨念に直撃し、山岡さんに取り憑いた物は消滅しました。


魔王の「消滅癖」が、役に立ったのです。


「くそっ! 身体中が熱い! ワシは湖で身体を洗ってくるからな! 後は貴様らで何とかしろ!」


そう言って魔王は、湖に向かって走って行きました。