身体中が毛で覆われ、口は狼のようにせり出し、そこには鋭い牙が。


「グルルルルルル……グルァウッ!」


これは……人狼というやつでしょうか?


動物霊に取り憑かれて、姿まで変わるなんて。


「ほう、ワシを前にしても怯えぬか。所詮、元は無知な人間という事か。だが、人狼如きがこの魔王に勝てると思うなよっ!」


獣と化した山岡さんに、魔王が飛びかかります!


コメディの鉄板パターンなら、魔王が一撃で吹っ飛ばされるところですが……そこはやはり腐っても魔王でした!


人狼の山岡さんの腕を、いとも簡単にひねり上げると、背後を取って動きを止めたのです。


「今だっ! 聖なる雫をこいつに振りかけるが良いっ!! フハハ、フハハハハッ!」


「フンッ、良い仕事をしたぜ、魔王よ!」


素早く小瓶の栓を抜き、二人に駆け寄ったマスターが、聖なる雫を振りまきました。


空中に舞った聖なる雫が、山岡さんと魔王に振りかかります!


辺りに悲鳴が轟きます!












「ギャアアアアアアアアアアアアッ!!」













……魔王のです。


「熱いっ! 熱いぞ! 何なんだこの水はっ!! そして臭いっ! この匂いは何なんだ! おのれ、謀ったなっ!」