のぼるの弱さを知らない中年太りから、取り引きに使うアイテムを受け取りました。


それは、小さな瓶に入った液体。


この液体を届けなかっただけで、コングデビルは怒り狂ったのです。


道具屋としてまだまだ見習いの私にはこれが何かわかりませんが、これがそんなに欲しかったんでしょうか?


「ヘイヘイ! じゃあサクッとコングデビルと取り引きしてこようぜ! あ、俺はバトルになった時の為に体力を温存するから、マスターが先頭で頼むぜ!」














HP1のどこに温存する体力があるんですか。


山を登るだけで死にそうな伝説の勇者は正直お荷物です。


「お、俺も一緒に行けたら良いんだがな……持病の深爪が……」


そう言って、顔を歪めて右手の指を押さえます。


言うに事欠いて、深爪ですか。


チラチラと様子を窺うようにこちらを見ているのがますます腹が立ちます。


もう、中年太りも黙っていてください。


「やれやれ……まあ、これも道具屋としての仕事の一つだ。未来には良い勉強になるだろう」


小瓶を道具袋の中に入れて、窓から霊山セイナールを見上げたマスター。


周りがショボいやつらばかりなせいか、ハゲ頭がいつもの三割増で輝いて見えます。