マスターが指差した先、霊山セイナールの中腹。


山の大きさに気を取られていて、それに気付かなかった私は、なぜマスターがそう言ったのか、やっと理解しました。


ウヨウヨと蠢く黒い影。


聖なる山の一部を覆うかのように、魔物の群れがいるのが肉眼で確認出来たのです。


「わ、わわっ! な、何だよあの数! まさかこの伝説の勇者のぼるを殺す為に、大軍勢で迎え撃とうってのか!? 卑怯なやつらだぜ!」














スライムにも負けるHP1の勇者は黙っていてください。


5歳児より弱いのぼるに、こんな軍勢で戦いを挑んだと知ったら、この魔物達も恥ずかしくて表を歩けなくなります。


「うーむ、ゆっくり休んでいる暇はなさそうだが、とりあえずそこの村で何があったのか情報を集めよう。時に情報という物は、俺達の命を救う物になり得るからな」


ドラゴンを素手で倒すマスターも、あの魔物の群れを見ては慎重にならざるを得ないというわけでしょうか?


道具屋としてだけではなく、熟練の冒険者の顔をしています。


そうして私達は、霊山セイナールの麓の村、フモートで情報を集める事になりました。