「ひゅー。まさか死闘の後に気を失ってしまうとは思わなかったな。相打ちとは言え、凶暴なモンスターを倒せて良かったぜ! じゃなきゃ、二人もやられてたかもしれないからな」


目が覚めたばかりだというのに、やたらと饒舌に喋りますね。


5歳児でも勝てるスライムにやられたのぼるが、本当に弱いという事だけはわかりました。


戦いに関しては、何も期待出来ません。


きっと私でものぼるを瞬殺できるでしょう。


「起きたなら行くぞ。目的の場所はまだ遠いからな」


ドラゴンの角を道具袋に入れて、それを背負うマスター。


のぼるを連れて行くのは不安しかありませんが……マスターがいればなんとかなるような気がしてきました。


そして2時間が経過。


私達は、聖なる雫があるという、霊山セイナールの麓までやって来ました。


聖なる山と呼ばれる霊山セイナール……もう、名前からして聖なる感じがビンビンします!


ありがたやありがたや。


「はぁ……はぁ……今日はもう、宿屋に泊まろうぜ。俺のHP、後1しかないよ……」


歩いていただけなのに、どんな虚弱な伝説の勇者ですか。


歩くだけでHPが減る勇者なんて、聞いた事がありません。


「どうやら……そうはいかねえみたいだな」


霊山セイナールを見上げていたマスターが、溜め息混じりに呟きました。