「……メアリーよ、この傷はいつ付いたものだ? 足が悪い原因はこれに違いないと思うのだが」


魔王が指差したのは、おばあちゃんの右膝。


良く見れば、アザのような物がそこにはありました。


「ああ、それはねえ、30年ほど前に夫と旅に出た時だよ。山を三つ越えた町で疫病が流行ってね。ちょうどその時に私もいたんだけど、運悪く疫病にかかってしまって、足をやられてしまったのさ」


メアリーおばあちゃんが、どうして足が悪くなったのか、考えもしませんでした。


「30年前に山を三つ越えた町か。フン。あやつの呪いだなこれは。しかし、長い年月が経っているからか、呪いが弱まっておるわ。この程度の呪いならば……」


膝に手を当てた魔王がそう言うと、何やら妙な言葉を話し始めて、その手が光ったのです。


まさか、おばあちゃんの足ごと消滅させるつもりじゃないですよね?


「ぬんっ!」


そして気合いを注入した魔王。


膝から紫色のモヤが飛び出して、フワフワと漂った後、フッと消えてしまいました。


「どうだ? 呪いを追い出してやったわ。これで貴様は自由に動ける。配達ではなく、自分の足でパンを買いに来るんだな」