「むっ! 出て来たか山岡! さあ、このパンを受け取るが良い! そしてワシに跪き、5Gを差し出すのだ!」



凄まじく上から言い放った魔王に対して、ドアの隙間からそっと手を出した山岡さん。


素早く魔王の手からパンを取ると、地面に5Gを投げ捨てて、ついでにツバを吐きかけてドアを閉じました。


やっぱり魔王では、人見知りの山岡さんは姿を見せてくれませんでしたか。


村人ですら、その姿を見た者は片手で数えるほどという極度の人見知りの山岡さん。


それにしても、お金を投げ捨てられるだけではなく、ツバまで吐かれるなんて、流石は魔王です!


人の神経を逆撫でする素質は凄まじいものがありますね!










「お、おのれ山岡!! この魔王様に向かって、金を拾わせるだけではなく、ツバまで吐きおって!! よかろう、貴様には地獄すら生ぬるい! この世からチリひとつ残さぬよう消滅させてくれるわっ!!」









その手に魔力が溜めて、山岡さんを家ごと消滅させようとしています!


「バカな事はやめてくださいっ! 山岡さんは大事なお客さんなんですよ! 毎回毎回そんな短気を起こしていてどうするんですか! もっとお店の仕事を理解してください!」


本当にお金を返すつもりがあるんでしょうかね、この魔王は!


歩合制のアルバイトなのに、全然役に立っていないじゃないですか。


これじゃあ、何年経っても390Gを返せませんよ。


「くっ! 命拾いをしたな、山岡! しかし必ず……貴様を滅ぼしてくれるわっ!」