「マスター、ど、どうするんですか? もう旅立つ気満々ですよ?」


「う、うむ……もう少し強めに痛めつけておけば良かったな。想像以上にこいつらが強くなったという事だな」


のぼるズが強くなければ魔界に向かえない、だけど強くなってしまったから、協会からの通知が間に合わない。なかなか悩ましいですね!


「おいおい、何をブツブツ言ってるんだ? とにかく俺達は今から魔界に向かうぜ! じゃあな! 次に会う時は、世界が平和になった時だぜ!」


「我々に任せておけ。世界の平和は、この伝説の勇者のぼるが勝ち取ってみせるさ」


こ、これは! 何とかして足止めをしないといけませんよ!


「あ、あそこで全裸で踊り狂っているのはもしかして、あのマチルダちゃんじゃないですかね!?」


くうっ!


我ながらなんて見え透いた嘘でしょう!


窓の外から見える一本杉の所にいるのは、村の入口に住んでいるコニーおばあちゃんです!


でもまあ、全裸で踊り狂っているのは事実です。


「な、なにいっ!? マ、マチルダちゃんって、あのマチルダちゃんかっ!?」


「お、俺はそんな物には興味はないのだが……ぜ、全裸で踊るなんてけしからんな。勇者として注意をだな」


あっさり引っ掛かってくれましたね。


そして、その隙をマスターは見逃しませんでした!


いるはずのないマチルダちゃんを探しているのぼるズの背後に接近して、唸るようなチョップが首に炸裂です!


「ぬんっ!」


今、ぬんっ!とか言いましたね、マスター。


トンッ! とかいう生易しい音ではなく、バキィッ! って音が聞こえました。


もう、超本気のチョップです!


これにはさすがののぼるズも、うめき声一つ上げずに床に倒れました!


「死んで……はいないみたいですね。これでまた何日か稼げますね。早く通知が来てくれれば良いんですけど」