とりあえず、魔王に配達を覚えさせなければならないから、声を掛けてもらいます。


私なんて、最初は声を掛けるのが恥ずかしくて、3時間もドアの前で立っていましたからね。


あの頃は若かったです。


すると魔王は、バサッとマントを翻して、また高笑いを始めたのです。


「ふははははっ! 出てこい山岡よ! この魔王様が直々に来てやったわ! 本来ならば貴様には死を運んでやる所を、喜べ! パンを運んで来てやったぞ! さあ、このドアを開け、我を受け入れるが良い。そして支払え! 5Gをな!」













あー……もう、全然ダメ。


モンスター界ではそれで通用するかもしれないけど、残念ながらここは人間界です。


ですが、恥ずかしがらずに大声を出せたのはポイントが高いですよっ!


「魔王さんダメです! ドアをノックをするのが基本ですよ! そうしないと、外でいくら話していても、独り言と変わらないんですからね!」


ドンドンとドアをノックして、山岡さんが出て来るのを待ちます。


「ぬうっ! 人間界とはなんという細かなルールの多い所なのだ! やはり一度、人間を根絶やしにせねばならぬようだな……」


またなんだか物騒な事を言っていますね魔王は。


だけど、乗ってたドラゴンから落ちたような魔王ですから、きっと大した魔王じゃないんですね。


そして、しばらく待っていたらドアが少し開きました。