「……な、なるほどな。事情は大体わかった」


真希さんが言ったことをマスターに話し、何とか難を逃れた私は、ホッと一息です。


話の途中で、チラチラと私を恨めしそうに見るマスターの視線なんて気にもしません。


まあ、このハゲにこういう色恋の話が解決できるとは思えませんけどね。


なんせ、私がここに住み始めてから、女っ気なんてゼロですから!


「だが、どうする? 以前魔王が言っていたように、シングルマザーでも子供を育てるつもりなら、それはそれで良いんじゃないのか?」


ああ、やっぱりマスターは女性にモテないから、そんな返事しか出来ないんです。


女心をわかっていませんねえ。


「マスターのバカ! ハゲ! 魔王はそう簡単に忘れられるようなやつじゃないよ! こんな置き土産を残してさ! また会いたくなるじゃないか!」


相談に来ておいてバカは酷いんじゃないですかね。


ハゲは事実だからいいとして。


まあ、私は紫の肌の魔物に会いたいとは思えませんけど。


真希さんは、そんなのを好きになる特殊な性癖があるから、今まで結婚出来なかったんじゃないでしょうか?


「うーむ……と言ってもな。魔王と連絡を取る手段がないし、やつの所に行くとなると、本格的な冒険になるからな。どちらにしても期待など出来ないぞ」


「そうか……そうだよね。相手は魔王、魔族の王だもんね。マスターで無理なら、きっと他の誰でも無理なんだろうね」