そんなわけで、私は魔王と一緒に配達に行く事になりました。


マスターに店番を変わってもらって、バスケットにパンを入れて店を出ます。


「まずは山岡さんの家です。この人は気難しい人なので、気を付けてください」


「ふん! たかが人間だろう。全ての人間はワシの前にひれ伏すのだ! ふはははは!」


良く笑う魔王ですね。


こんな陽気な魔王はなかなかいないです。


道を歩き、村の中央へと向かって歩きます。


ぽかぽかするお日様の光と、肌を優しく撫でてくれる爽やかな風が気持ちよくて、配達は大好き。


村の人とついついお話をしてしまうんですよね。


でも今日は、魔王を連れているからダメです。


お話したい気持ちを抑えて、私は山岡さんの家に急ぎました。


村の中にある、それほど立派でも、みすぼらしくもない家。


その家の前で、パンの包みを取り出した私は、魔王に手渡して口を開いた。


「じゃあ、配達に来たと言って、山岡さんから代金をもらってください」


「ふむ、人間とはおかしなものだな。物が欲しいなら店まで取りに来れば良いではないか。それを人に持って来させるなど……しかしそのおかげで、ワシが攻め入れるというわけだがな! ふははははは!」


そういうのはもう良いですから。


不気味な笑みが何やら不穏な空気を感じさせます。