普段はちょいと小粋なおとぼけ親父なのに、いざ戦いとなると、やっぱり魔王なんだなと痛感させられますね。


勇者に対する(主に山岡さん)容赦のなさは、そりゃあもう魔王です。


山岡さんのハラワタを食らい尽くしてしまいそうです。


「さて……ワシは帰るとしよう。グレゴリー! グレゴリーよ! ワシを迎えに来い!」


空に向かって、魔王が吠えます。


いやいや、そんな控え目な声で、部下のモンスターに届くはずがないじゃないですか。


……と、思っていたのに。


物凄いスピードで、空を飛んで来る何かの影!


まるで隕石かと思うような強烈衝撃波が私達を襲います!


「むっ! いかん!」


それを危険だと察したマスターが、私を覆うように庇ってくれました。


それでも激しい衝撃は、マスターの身体を揺らし、私に伝わります。


砂埃が辺りに撒き散らされて……沈黙が流れました。


「お待ちしておりましたぞ魔王様。やっと借金を返済されたのですね」


マスターの脇から覗くと、そこには巨大なドラゴンに乗った、いつか見たグレゴリーという魔王の部下がいたのです。


「久しいのう、グレゴリーに……ペス! 貴様がワックスを付けていたせいでワシは!」