山岡さんはぐったりとしていて、ギブアップも出来ません!


まあ、勇者対魔王にギブアップなんてないのでしょうけど。


「ふははははははっ! 無様だな伝説の勇者のぼるよっ! 二度と逆らえぬよう、こうしてくれるわっ!」


ああっ!


魔王が、山岡さんの足を固める右腕に力を込めて……身体を反りましたっ!














ボキィッ!!











ここ、この音は……まさか、山岡さんの足の骨が折れてしまったんじゃ……。


「ま、魔王さん! やりすぎで……」


と、私が非難の声を上げようとした時です。


隣に立っていたマスターが、私の目の前に手を伸ばして、それを止めたのです。


「ダメだ未来。勇者と魔王の戦いに口を挟むんじゃねえ。それは……粋じゃねぇ」


ぐぬぬ……勇者と魔王の戦いは、ただの喧嘩や戦闘とは違うという事ですね。


特別な戦い。


そのわりに、圧倒的に勇者が弱いのは絶望的じゃないですか。


「ふん、山岡よ。貴様が伝説の勇者で良かったぞ。あっさりとは殺してやらんからな! ワシの所に来るたび、死の間際まで追い込んでくれるわっ!」


ピクリとも動かなくなった山岡さんから離れ、見下ろすと、怒りに満ちた表情で吠えたのです。