「マスター、ワシは貴様のような豪傑には出会った事がない。魔王軍の中にも、貴様やミッチェル杉下に敵う者などおるまい。まさか貴様は……」


と、モップで床を拭きながら、やけに真面目な顔でマスターを見詰める魔王。


この姿を真希さんが見たら幻滅するかもしれないのに、どうしてこんな時にいないですかね?


「おっと、そこから先は言うんじゃねえ。お前の想像なんざ俺は聞きたくないからな。普通なら、お前ほど道具屋としての適性があるやつは見た事がないから手放したくはないんだが……お前にもやる事があるだろうからな」


「すまぬなマスター。ワシが人間として生まれていたならば、道具屋も良かったかもしれんが……残念ながらワシは魔王なのだ。全世界を支配するという使命があるのでな、戻らねばならぬ」


魔王の言葉に、マスターはフッと笑みをこぼし、全てを理解しているような表情を向けます。


……全てを理解しているなら止めましょうよ!


全世界を支配するとか物騒な事を言ってるんですよ!?


人間の敵じゃないですか!!


「さて……床掃除は終わったぞ。これでワシは晴れて自由の身となったわけだ。世話になったな、未来、マスター」