そして、その時はやって来ました。


太陽が沈み、辺りが暗くなり始めた頃に、マスターが作業場からのっそりと現れて、ギロリと魔王を睨み付けたのです。


「はうっ!」


と、小さな悲鳴をあげて内股になる魔王。


「ふっ……だがしかし! チビっても私にはズロースがあるのだ!」


いや、結局チビったんですか!


もう店じまいなのに、最後の最後で魔王のおしっこを拭き取らなきゃならないじゃないですか!


何してくれてるんですかこいつは!


「……今までご苦労だったな。お前が来て、未来も少し成長したようだ。良い刺激になってくれたと思うよ。お前がいなければ、未来は競う事を知らずに道具屋の売り子で一生を過ごしていたかもしれん」


それは言い過ぎじゃないですかね、マスター。


まるで私がボンクラみたいな言い方じゃないですか。


「ワシも良い経験をさせてもらったぞ。まさか睨まれただけでチビるなど、経験できるものではないからな、ふははははははっ!」


「笑ってないで床を拭いてください。おしっこまみれですよ」


カウンターの隅に置いてあるモップとバケツを魔王に手渡しましたが、まだ笑っています。