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「……柊、あのさ」

「ん?」

最近、碧の様子がおかしい。何か言いたげで、だけど何も言わない。そんな日が続いていた。

「何か言いたいなら、言って」なんて言えたらいいんだけど……そんなこと言えない。


「なんでもない」

そう碧が言うと、彼女の髪をわしゃわしゃした。

「もうっ! 何するのよ〜」

「はは、可愛いなと思って」


本当可愛い。本当は、気持ちを伝えて抱きしめてしまいたい。


「あのねっ柊! これ、プレゼント……私だと思って持っていて」


彼女は俺の顔を見ずに渡してきたそれは組紐だ。一昨年は髪を結うのにもらった……いつもそれを付けているんだけど。これはなんのプレゼント?


「……碧?」

「私、行くね……いらなかったら捨てて」


碧は俺の顔も見ないで走って行った。


「碧っ!」
彼女を呼んだけど、何も反応はなく……走って行ってしまった。俺は何かしてしまったんだろうか。