「帰らなきゃ……」
キミのことが本当は好きでたまらない。だけど、この気持ちを言ってしまったら彼女が危ない目に合うかもしれないって思えば俺は気持ちすらも言えなかった。
「兄貴」
「……朔か」
急に現れたのは、一族で唯一話せる相手の朔。酒呑童子(しゅてんどうじ)と血が繋がりがある同じ鬼だ。
彼は悪さをするが、本当はしたくない……という中途半端な感じの鬼だ。
「あの娘が好きなんだ? ははっ、“禁断の恋”だね」
「……何が言いたい?」
「俺は兄貴の意見に賛成だ。妖は悪さをする、そんな考え捨てて人間と助けあえる関係……それって素敵だよね、だから俺は付いていくよ」
ああ……一緒にいてくれる奴がいるなら頑張れるかも。
「─︎─︎─︎一緒に戦ってくれるかい?」
「もちろんいいよ。これがうまくいったら、あの退魔士の娘を花嫁に迎えるのもいいね」
なんて、そんな気楽に彼がいうものだから「そうかもな」と言ってしまった。