鬼なら悪さをしていくことを生業にしている。人からどんな手を使っても金銭類や宝物を手に入れる。時には、人間を襲い……最悪、殺してしまうのだ。
俺には、そんなことできない。だから一族から『意気地なし』『それでも鬼神様の後継者か』『臆病者』と幼い頃から言われているのだ。
きっと、父さんは俺を見ている。どこで誰と会っているかは知っているはず。
だから、碧が好きだとは言えない。
「明日はきっと言い日になるよ」
「それ、俺が昨日言った言葉」
「あれ、そうだった?」
彼女といると心地良くて自分を失わなくて済む。ここにいてもいいよと言ってもらえるようで……本当に楽だ。