「柊!」
神社の拝殿の影に向かって俺の名前を呼んだ。
「碧、おかえり」
この子は、桜堂碧(さくらどう みどり)。彼女は退魔士一族の娘だ。
本当なら俺らは敵同士……なはずなんだけど彼女にはあるはずの“退魔”の能力がないのだ。そのせいで家では無能だと蔑ろにされているんだと言っていた。
「ただいまっ」
「碧は元気だな〜」
「柊と会えるから、だよ」
……俺もだよ、と言いたい。だってこの子には本当に助けられている。
俺は、鬼だ。それも父親が鬼神。俺はその鬼神の名を受け継ぐことになっている。だが、俺は……悪さができないのだ。