おかげで今日は、特別な日になった。

いつもは閑散としている理科室に、人があふれている。

鹿島たち1年の提案で、デモをやるなら、ついでに校内宣伝もして、部員集めに一役買ってもらおうということになった。

それでこの賑わいだ。

文化祭? そんなのに間に合うわけもなく、とっくに終わっている。

「はい、ちょっとどいてくれる?」

人混みをかき分けて、俺は実戦スタジアムとなるテーブルまで、ようやくたどり着いた。

ほとんどが鹿島ファンの1年で、あとは奥川と、その仲間たちの生徒会連中。

谷先輩も、見にきてくれるって言ってたな。

鹿島たちのマシンには、画用紙に手書きのメッセージやイラストが描かれたものが貼ってあったりして、まぁ気合い十分、愛されてる感が満載だ。

俺はシンプルだけど、かっこいい自作のマシンを小脇に抱える。

「それでは、出場順位を決めるじゃんけんをしたいと思います!」

司会になった山崎はそう言った。

出場順位といっても、俺と鹿島の2台だけだ。

俺が前に進み出ると、鹿島もその正面に立つ。

「じゃんけん、ぽい!」

的は体育館倉庫から、鹿島たちの作った的を持ち込んだ。

俺のは正式ルールでは5つある的を、3つ分しか作っていないからだ。

事前に1年たちが運び込んだ、これまた装飾の効いたかわいらしい的が、不釣り合いなほど黒いテーブルによく映える。

じゃんけんは俺が勝ったので、先行を選んだ。

「え、いいんですか?」

どうしてそんなセリフになったのか分からなかったけど、鹿島はそう言った。

「こっちを先に終わらせといた方が、いいだろ」

この空気を読めよ。

どう見たって、お前らの方が主役だろ。

山崎をちらりとみる。

彼はうなずいて、携帯のストップウオッチを起動した。