「なんか、マシンの最初のアイデアも、じつはお父さんらしいよ」

「それで言われた通りに作ってたのか」

「いや、半分は鹿島が考えたんだって」

そんなの、聞いてない。

そりゃ俺なんかが一人で立ち向かったって、絶対に敵うわけないじゃないか。

相手のレベルが違う。

「鹿島のアイデアにお父さんがのっかって、最終的に親父が完成させちゃうっていう、まあ、夏休みの工作あるあるだよね」

山崎は何でもないことのように、立ち上がり背を向けた。

「まーおかげでちゃんと出来たよ。後は細かい所で精度を整えてって、感じかな。工学部の教授が手を出したっていっても、実際に実物を見て、分かってアドバイスしてるわけじゃないから、その通りには全然いかなくてさ。実際問題、こっちでちゃんと考えて、やり直さないと無理だったけどね」

山崎はそこにあった棚から、俺が序章までしか読んでいない5千円の本を取り出した。

「ちょっとコレ、借りていくぞ」

鼻歌交じりに山崎が出て行って、俺の体はそこにあった椅子の上にストンと落ちた。

なんだ。

最初から勝負なんて、する必要なかったんだ。

そりゃ鹿島たちから見たら、こんなマシン、おもちゃ作りみたいなもんだろうし、俺の努力や苦労なんて、バカみたいにくだらなかっただろうな。