そんなこんなで、ついに夏休みが終わった。

始業式も終わり、ホームルームも終わって解放されると、俺はすぐに理科室へと向かう。

「お前、マシンちゃんとできたの?」

真っ黒に日焼けした山崎は言った。

「まぁね、それなりにね」

俺は乱暴に鞄をつかむと、教室の外へと飛び出した。

今の俺は、ニューロボコンのマシン以外の情報を、頭に入れたくない。

階段を駆け上がる。

その途中に、鹿島と奥川の背中が見えた。

「あ、先輩、お久しぶ……」

鹿島の声も無視して、両足を動かす。

俺は今、マシンのこと以外、考えたくない。

背後で並んだ二つの顔が、呆れているのが見えるようだ。

だが俺は今は、マシンのことしか、考えない。

理科室に飛び込んで、後ろ手に扉を閉めた。

これでよし、俺の世界は守られた。

準備室に割り当てられた戸棚の鍵を開け、作りかけのマシンを取り出す。

黒いテーブルの上に置かれたそれは、いつも以上に、異様にかっこいい。

「よし、やるか」

今日は初めての、実戦デモの日だ。

公式ルール通りに作った下3つだけの的を用意する。

電源のスイッチを入れると、それは小気味よいモーター音をたてながら動き出した。

よし。

いよいよ次は、本体だ。

公式ルール、ギリギリのフィールドを理科室の実験テーブル上に確保出来た。

的とマシンとの規定の距離が、本当に黒いテーブルの上にピッタリ収まっている。

そのテーブルのラインに沿って、俺はマシンを走らせるレールを敷いた。

この直線の上を左右に動いて、的を狙う。

俺はその真っ直ぐなレールの上に、出来上がったばかりのマシンを乗せた。

シリンダーOK、タイヤもOK。

動力として認められている、単一電池2本も搭載した。

準備完了。

マシン越しに、ウインウインと音をたてる的に、狙いを定める。

よし、実戦練習、スタートだ。