「やるのかよ、やんないのかよ」

「やるよ」

「ホントだな。明日は絶対に、ちゃんと来てやれよ」

こんな電話をかけてくるなんて、もしかしたら山崎は本当に明日から、理科室の方に来てくれるかもしれない。

プツリと音声が切れて、俺は多少の期待を胸に翌日の朝を迎えた。

だがそんな淡い期待は、午後になって裏切られたことに気づく。

俺は山崎と奥川が、ひょっこり顔を出して来てくれることを期待しながら学校に来たのに、お昼を過ぎても二人は現れなかった。

まぁ、俺自身が学校に着いたのが、11時を越えていたんだけど。

エアコンの効いた快適な理科室から一歩外に出れば、廊下はちょうど不愉快になる程度の蒸し暑さで、校舎の外に出ると、そこは地獄のような炎天下だった。

一人でコンビニのおにぎりを食べ、一息ついた後でも、二人は現れなかった。

俺は久しぶりにガラス扉の無機質な戸棚からマシンを取り出し、どこまで作業が進んでいたのかを確認する。

そうそう、ここまでやって、あとはここをこうするつもりだったんだなんて、そんなことを考えながらも、結局何にもしないまま、また一時間が過ぎた。

二人が来てから一緒に作業を始めようと思っていたのに、こういう時にも、本当にあいつらは気が利かない。

俺は何度も携帯を取り出し、二人からの着信がないか、液晶の画面を確かめる。

ここの窓からは、体育館倉庫の様子は分からない。

俺は偶然を装って、さりげなく、の、つもりだったのに、通りかかった体育館横の倉庫には鍵がかかっていて、誰もいなかった。

「ウソだろ?」

俺はシャッターの取っ手に手をかけて、何度もそれを持ちあげてみる。

ガタガタと大きな音はたてても、それは1ミリも浮かび上がってはこなかった。

そうか、なんだ。

俺は、待たれていたわけでは、なかったんだ。

俺を待ってくれている奴なんて、この世に一人も、いるわけなかった。