授業が終わり、適当にクラスの友達としゃべって、ある程度の時間を潰しておいてから、俺はさらに残りの暇を潰すために、廊下を歩いた。

3階にある理科室、その窓からながめる景色が、何よりも好きだった。

そこで飽きるまで街を見下ろしてから、家に帰る。

その静かで穏やかな時間が、俺のその日の嫌なもの全て浄化してくれるような気がした。

いつもならシンとして冷たい廊下の奥に、今日は灯りがついている。

外から中をのぞくと、背の高い鹿島の横顔が一番に見えた。

俺は勢いよくドアを開ける。

「なんだ、お前ら!」

鹿島の周りには、真新しい制服を着た、数人の生徒が群れていた。

「クラスの友達と、一緒に見学にきました」

その後ろから、ひょっこりと山崎が顔を出す。

「よっ、遅かったな」

クラスの友達って、まだ学校が始まって一ヶ月も経たないのに、どうしてそんな人間を『友達』って呼べるんだ。

その感覚が俺には分からない。

鹿島は山崎に、何かの機械部品の説明をしている。

俺はそれを横目に見ながら、実験台の上に鞄を置いた。

山崎は笑っている。

鹿島がうれしそうに赤らめた頬で「はい!」と返事をすると、この二人の周囲に生け垣を作っている新入生どもも笑った。

俺はオンラインゲームのログをチェックしたいのに、唯一の癒やしであるその黒いボディーのパソコンは、強靱な人垣要塞の中心にあった。

簡単には近寄れない。

山崎がようやくそこから抜けだしてきて、窓の外を眺めていた俺の隣に立った。

「鹿島な、あいつ、今年から始まる、ニューロボコンの高校生の部に出るつもりなんだってよ!」

「はぁ? バカじゃねぇの」

高専だけに出場が限られていた有名なロボット競技の、一般校を対象にした大会が、今年試験的に開催されるという話しは聞いていた。

去年の部長だった谷さんが、そのチラシを持ってきた。

「あんなハイレベルの難しい大会、だから高専に限ってたのに。何にも知らない普通科のお遊び部が参加したって、どうにかなるもんじゃないだろ」

谷さんの持ってきた募集要項を見た。

ルールブックの内容が難しすぎて、途中で読むのを諦めた。

何が一般校にも参加条件を解放だ、ハードルが高すぎて、全然解放なんかされてない。