その日の帰り道だった。

山崎はとっくに先に帰っていて、そこにはいなかった。

俺は理科室の片付けを済ませ、まだまだ余韻のように陽の残る階段を降り、校舎の外へ出た。

奥川と鹿島がいた。

奥川は遠目にも、ちょっとおかしいくらいテンションが高くて、鹿島は少し、困ったように歩いていた。

奥川が進路を邪魔するように歩くから、鹿島は歩きにくくてしょうがない。

奥川の肩と鹿島の腕がぶつかった。

それに鹿島が立ち止まったのをいいことに、奥川は完全に立ちふさがる。

鹿島は両手に段ボール箱を抱えていて、どうにもできなかった。

彼女は鹿島に、何かを必死で訴えていた。

それはきっと、言葉にしたくても上手く出来ないセリフで、だけど一番言いたくて言えなくて、気づいてほしいけどはっきりとは言われたくない、そんな類いの言葉だった。

相手の顔色を敏感にうかがっている。

ちょっとでも彼の感情が動けば、彼女はとても傷ついたり喜んだりするのだろう。

そのことに奥川自身は気づいていて、鹿島は多分気づいていないか、気づかないフリをしている。

それが俺には、よく分かる。

それは今、こうやって奥川を見ている自分が、鹿島を見ている奥川そのものだからだ。