そんな、とてもじゃないが、まだ人様に見せられるような状態でもないマシンの短い動画に、とってつけたような賛美の声と応援メッセージ、ウソかホントか分からないような、いい加減なアドバイスが連なっている。

こいつらは、ネットでつながった同類か。

そう思うと、俺はまた余計にイラついた。

どうしてもそれは、オナニーのように感じる。

自慰的行為だ。

それも公然と。

気持ちわる。

そうやってお互いに狭い世界で、いちゃこらやってればいいさ。

誉めてほしけりゃ、まず相手を誉めろ。

そしたらお返しに、相手も自分を誉めてくれるからな。

いい子でいれば、いい子と思われる。

誰かにいい奴だと思われたければ、誰かを「いい奴」だと、言い続ければいい。

とても簡単だ。

そうしたらこの世の中に、イヤな奴もダメな奴もいなくなって、世界は平和になる。

君たちの望んだ素晴らしい世界だ。

よかったな。

そうやって俺みたいに、その輪から外された人間を、見えないようにキレイにのけ者にして、美しい世界を作ればいい。

お互いに距離をとって、接しないようにすごせれば、この世は安泰だ。

ざまあみろ。

夏だ。

ジリジリと最強の太陽が照りつける。

だけどな、お前がどんなに頑張ったって、エアコンのきいた部屋にいる俺たちには、どうしたって敵わないんだよ。

分かったか。

もうすぐテストが始まる。

それが終わったら夏休みで、夏休みが明けたら、すぐに文化祭が始まる。

そこでこのマシンの、お披露目会をやらないといけないな。

また新しい部員の獲得にも努めないと。

それが部長としての、俺の役目だ。

そうだろ?

10月には、いよいよ予選会が始まる。

残りは約3ヶ月。

それまでには、何とかしないとな。

俺は盛大にため息をつくと、一向に進まない金属の部品を手に取った。