校内の自販機にも色々と種類があって、ペットボトルタイプのものもあれば、紙コップや紙パックタイプのものもある。

校舎や階によっても、それぞれ違っていて、どこで何を売っているのかは、超重要情報だ。

季節ごとに入れ替わる、限定品も外せない。

昼休み、俺は用意していた紙パックのジュースを、奥川に渡した。

こいつの、いつも飲んでいるものは、知ってる。

パイナップルのやつだ。

差し出されたそれを、彼女は素直に受け取った。

「だからさぁ、いつも思うんだけど、どうして私をいちいち呼び出すの?」

俺の後ろをついてくる奥川が、そんなことを言っている。

まぁ、そうだよな。

「部長の仕事にさ、毎月の活動報告を、生徒会に出さないといけないの、知ってるだろ? それを手伝ってもらおうかと思って。お前なら、よく分かってるし」

昼休み、俺は彼女を連れて、人気のない校舎裏のベンチに座る。

こうやってたまに並んで話すのが、俺たちの間で、約束ごとのような、習慣になっていた。

「そういうのって、別にわざわざ会って話す必要なくない?」

俺が腰を下ろしたのに、奥川は立っていた。

ベンチのプラスチック板をぺしぺし叩いて合図したら、彼女はちゃんとそこに座った。

「だからさ、お願い出来るかな」

俺は彼女の顔をのぞき込む。

奥川はムッとした表情で、視線をそらせた。

「なぁ、頼むよ」

自分でも驚くような甘えた声に、俺は内心でふっと笑って、前を向く。

いつものフルーツ・オレを口にした。