そうやって相変わらず、俺は一人で理科室の格闘を続けていた。

もうこんな状態にもすっかり慣れて、何とも思わなくなっている自分がいる。

作業のコツも分かって、少しずつではあるが、マシンの完成を疑うことは、なくなってきていた。

入ってきたのは、奥川だった。

「ねぇ、何が楽しくて、こんなことやってるワケ?」

やって来るなりご機嫌はMAX最大級に不機嫌で、よく分からないけど、なぜかめちゃくちゃに怒っている。

「私は、確かに2年生だけど、この部に入ったのは今年になってからで、なんの知識もなければ経験もない状態なの。知らなくて当然じゃない? なのになんなの」

あー、1年ともめたのかな? 鹿島? 

それとも、その他大勢?

「しかも、生徒会との両立だから、そっちの方がメインだし、だけど結局はそれも部のためになってるってのが、分かってないんだよね。ねぇ、聞いてる?」

「聞いてる」

今が、マシン本体の骨格を組み立てているところで、あんまり細かくて神経を使う作業中じゃなくて、本当によかった。

「なんなのかな。私が邪魔なら、邪魔ってはっきり言えばいいのに」

彼女は黒いテーブルの上に腰を下ろして、膝を抱えたまま、今度はじっと黙った。

俺は大きな物音を立てないように、慎重に自分の作業を続ける。

「ホント、むかつく」

見ていないフリをしながら、見ているのが、いつの間にか得意になった。

聞いていないような態度で、だけどちゃんと、聞いている。

余計なことを言ったり、何かしたりすると、ますます機嫌が悪くなることを、知っている。

俺は彼女の中の嵐が過ぎ去るのを、じっと待っている。