「だから、俺がなんとかすればいいんだろ?」

「あっそ。じゃあ別にいいのよね。庭木くんに任せておいて」

どうやら奥川は、腹を立てたようだ。

「まぁ結果的には、そうなってしまってるよね」

「私、部活に行くから。後はよろしく」

完全に怒った奥川は、廊下をずんずん歩いて、あっという間に消えてしまった。

俺はまだ、奥川の感触が残る腕に、そっと触れる。

「あぁ、もう。奥川って、本当に扱いが難しいんだよなぁ!」

さっきまで、「奥川さん」と呼んでいた庭木が、急に呼び捨てになった。

「俺の前でお前と腕組んだりしてさ、そんな挑発に、誰がのるかっつーの」

「別にお前の前じゃなくても、そういう時あるけど」

「は? いつ?」

本当は別にないけど。

小学校か、それくらい、ずっと前の話だけど。

「いつって、たまに」

「なんだよ。あの女も、結局バカなんだな」

庭木は笑った。

「なにが?」

「別に。女なんて、結局はそんなもんなんだよな。俺と違って、お前は騙されんなよ。奥川と、つき合ってるわけじゃないんだろ?」

それには答えられない。

俺に答える義務もなければ、その必要もない。

「奥川は、そんな奴じゃない」

「まぁ、いいんだけどね」

庭木は激しく首を横に振った。

イライラとして、ため息をつく。

「これだから、困るんだよ」

庭木は、謎の微笑みを残して立ち去った。

俺は一人取り残されて、ポツンとしている。

あぁ、コレがアレか。

女子たちがたまに言う、「ウザ庭木」とかっていうヤツだ。

生徒会長やってるからって、自分が無条件でモテてるとか、一段上とか、勘違いしてんじゃねーぞって、やつだ。

男には普通に接することが出来るのに、女子にはやたらと、上から構える。

庭木自身は、自分が無意識にそんな態度をとっていることに、全く気がついていないみたいだ。

あいつはとにかく、女子受けが悪い。

いいや、庭木のことなんて。

とにかく理科室に行こう。

俺はようやく理科室にはいると、シリンダーを手にとった。

なんだか人間を相手にしているよりも、コイツらの相手をしている方が、気が楽に思えてきた。

今はとにかく、マシン作りだ。