「だったら別に、奥川さんが電子制御部に入る必要、なくない? なんで入ったの?」

「ずっと頼んではいたんだよ」

「それは知ってる」

「俺が部長になったから」

まだ腕に絡みつく、奥川の感触が妙に生々しい。

庭木は、奥川を見た。

「だけど、奥川さんってさぁ……」

「ほら、困ってる部活を助けるのも、生徒会の役目じゃない。今回は特に、学校側のプッシュもあったし」

彼女の腕が、するりとほどけた。

「それはそうだけど。本来はどこかの部だけ、特別扱いなんて出来ないよ。他からの不満が上がれば、対処が難しくなるし、あまりよくないことだとは思うけどね。いくら生徒会本部役員だからって、勝手なマネは許されるべきではないけどな」

「だから、期間限定なんじゃない。倉庫の片付けも必要だったし」

庭木は、上から目線で両腕を組んだ。

「そもそも、そういった個人的なつながりで生徒会が動くことは、あんまり好ましいことではないな。なんでそんなことしようと思った?」

「だから、生徒会のみんなで先生も交えて散々話し合って、今回は特別だって、決まったじゃない。その時は、庭木くんだって、賛成したでしょ」

「まぁ、そうなんだけどさ。個人的には反対だけどね。今でも。生徒会、会長としては、認めたよ」

「なんでそれを今さら蒸し返すわけ?」

「別に。まぁ、最終的には俺が全部責任をとるから、奥川さんは何も心配することはないよ。俺はこういう個人的なことは、好きじゃないけど」

庭木の視線が、俺と奥川を舐めるように見て回る。

彼女は、大きく息を吐いた。