その日、庭木は廊下で俺を待ち伏せしていた。
「よお。お前、最近なんかいいことあっただろ」
「は? 別にねぇよ」
何を言ってんだか。
庭木はいつだって的外れなことばかりを言ってくるが、今日のはまた、強烈にコースを外している。
「やなことだったら、いっぱいあったけどな」
「ウソつけ!」
いつもなら、そう言えば変に生徒会長風を吹かして、『俺に任せとけ』なんて言ってくるはずの男が、そこをスルーするどころか、逆にかみついてきた。
「嫌なことのワケないだろ。何があったのか、正直に言え」
少し浅黒い、いかつい顔を鼻先に近づけられても、何にも楽しくない。
「ないって。なんなんだよ」
俺は理科室に行くんだ。
お前に構っている場合じゃない。
片腕で庭木を押しのけようとしたら、その腕をがっしりとつかまれた。
「別に悪いことじゃないじゃないか。何を隠さなきゃならない必要がある。俺とお前の仲じゃないか」
そんなことを言われて、逆にどんな仲なのか聞いてみたくなったが、それはきっと今以上に、果てしなく面倒くさいって、知ってる。
「分かんねぇって、はっきり言えよ」
そう言うと、庭木は急に顔をまっ赤にした。
「いや、別にお前が言いたくないって言うんなら、無理に聞き出さなくてもいいんだけどな」
俺は盛大にため息をつく。
本当にこの男は面倒くさい。
「じゃあもう、いいだろ」
「待て。やっぱ無理」
がしがし歩き出した俺の後ろを、庭木は追いかけてくる。
「いや、もしかしたら、つーか多分、俺の勘違いだとは思うんだけどさぁ。もしかしたらの可能性ってのも、全くないってワケじゃ、ないような気が、しなくもなくは、ないわけよ」
「なんだよ」
庭木は顔を、真っ赤にする。
「お前さぁ、彼女、出来た?」
「は? なにそれ」
「よお。お前、最近なんかいいことあっただろ」
「は? 別にねぇよ」
何を言ってんだか。
庭木はいつだって的外れなことばかりを言ってくるが、今日のはまた、強烈にコースを外している。
「やなことだったら、いっぱいあったけどな」
「ウソつけ!」
いつもなら、そう言えば変に生徒会長風を吹かして、『俺に任せとけ』なんて言ってくるはずの男が、そこをスルーするどころか、逆にかみついてきた。
「嫌なことのワケないだろ。何があったのか、正直に言え」
少し浅黒い、いかつい顔を鼻先に近づけられても、何にも楽しくない。
「ないって。なんなんだよ」
俺は理科室に行くんだ。
お前に構っている場合じゃない。
片腕で庭木を押しのけようとしたら、その腕をがっしりとつかまれた。
「別に悪いことじゃないじゃないか。何を隠さなきゃならない必要がある。俺とお前の仲じゃないか」
そんなことを言われて、逆にどんな仲なのか聞いてみたくなったが、それはきっと今以上に、果てしなく面倒くさいって、知ってる。
「分かんねぇって、はっきり言えよ」
そう言うと、庭木は急に顔をまっ赤にした。
「いや、別にお前が言いたくないって言うんなら、無理に聞き出さなくてもいいんだけどな」
俺は盛大にため息をつく。
本当にこの男は面倒くさい。
「じゃあもう、いいだろ」
「待て。やっぱ無理」
がしがし歩き出した俺の後ろを、庭木は追いかけてくる。
「いや、もしかしたら、つーか多分、俺の勘違いだとは思うんだけどさぁ。もしかしたらの可能性ってのも、全くないってワケじゃ、ないような気が、しなくもなくは、ないわけよ」
「なんだよ」
庭木は顔を、真っ赤にする。
「お前さぁ、彼女、出来た?」
「は? なにそれ」