絶対にマシンを完成させると、俺が固く決意したのとはうらはらに、このシリンダーという秘密兵器は、どうも俺とはタイプ相性が違うようだった。

コレを手に入れてから、かれこれ一週間が経とうというのに、一向に思い通りにならない。

何がいけない、何が悪い? 

俺にはどうしても、それが分からない。

最近は山崎ともしゃべっていないし、あいつと話さなかったら、俺には他にしゃべる相手がいなかったのかと思うほど、誰とも話しをしていなかった。

教室の外の廊下で、その山崎と奥川が、何かを真剣に話していた。

部のことなら、なんで俺に言わないんだろう。

それとも、部とは関係のないこと? 

奥川は入部したとか言っても、基本的には生徒会本部の活動がメインなんだろうから、本部からの連絡は、本来俺にすべきじゃないのか? 

もしかしたら、山崎は副部長だから、そこから俺に話しが回ってくる? 

そのつもりなんだろうか。

それならしばらく待っていれば、山崎の方から話しかけて来るんじゃないかと思って、その日一日を待ってみたけれども、放課後になってもあいつはやっぱり、俺には何も言わないまま、先に教室を飛び出してしまった。

1年の体育倉庫へいくつもりだ。

俺はため息をつく。

「あ、吉永だ」

すれ違った廊下で、声をかけてきたのは、奥川の方だった。

「どう? ニューロボコンのマシン作り、そっちは進んでんの?」

苦虫をかみつぶすとは、まさにこういうことか、とか、思いながらも、俺は彼女に手招きする。

そのまま人気のないところへ誘い出した。

「え、なに?」

「あのさぁ、お前、なに考えてんの?」

奥川とは小学校からの幼なじみで、いわゆる腐れ縁というやつだ。

ずっと一緒にいるから、こいつこそ俺のことを、何でもよく知っている。

「やっと入部届け出したと思ったら、なんで1年の手伝いしてるわけ? 俺んとこ、来いよ」

そんなことをわざわざ言わないといけないのも、何だかおかしな気がして、俺はうつむいたまま、小声でつぶやいた。

「俺いま理科室で、一人でやってんだぜ」

「しょうがないでしょ、せっかく入って来てくれた1年生なんだから、大事にしないと」

「毎日行ってるの?」

理科室からは、体育館倉庫の全容までは見えない。

だけど、今まで何もなかった時のように、週2でやってたんじゃ、絶対に間に合わない。

手を伸ばして、彼女の制服の袖をつまむ。

だけどそれは、するりと払われた。