ピーヒョロロと鳴くのは、鳶だ。

俺には、ピーピピピにしか聞こえないのだが、ピーピピピで検索して出てくる鳥は、ワケの分からん鳥だった。

絶対いつも家の近くにいる鳥じゃない。

コイツらはカケスなのかと思って、画像を検索してみたけど、これもまた全然違う鳥だった。

へー。

カケスって、こんな鳥だったんだ。

知らんかった。

だけどじゃあ、毎朝俺の目の前を横切るこの謎な鳥どもは、一体なんなんだ。

4分遅れでやって来た電車に乗り込んだら、まぁまぁ混雑していた。

俺はこれ以上の検索をあきらめて、携帯をポケットにしまう。

時間通りぴったりにやって来る電車に乗れたら、36分には乗り継ぎの駅に着くのに、今日は4分も遅れやがった。

次の乗り換えで7分も待たされるのが、どれだけダルいのか、分かってない。

それでも今日は乗り換えの電車が2分遅れていて、逆にいつもは先に出ているはずの電車に乗ることが出来た。

それならそれで、よい。

左右からぎゅうぎゅうに体を押されて、俺は棒になったような気分で、じっと立っている。

こうなったら本当に、どこかに梱包されて運ばれていく、機械部品みたいだ。

降りなきゃいけないタイミングで、ぐっと周囲を押しのける。

そうすれば降りるんだって、みんな分かってくれるから、意外と簡単に降りられるもんだ。

ホームに出て、ほっとする。

こんなに早く家を出なくても、十分に学校には間に合う時間なんだな、本当は。

教室に入ると、やっぱりそこに、山崎はいた。

山崎とは、1年の時も同じクラスだった。

入学してすぐは、クラスに誰も知り合いのいない状態が続く。

ちゃんと話せる相手もいない。

それで俺たちは、やっぱりこんな風に、誰もいない朝の教室で、二人きりだった。

見知らぬ人間がたくさんいる教室に、後から来て分け入るよりも、誰もいないと分かっているところに行って、後からくる人間を迎え入れる方が、楽だった。

「エアコン、つける?」

初夏の教室で、ぐんぐん室温の上がっていくのを前に、その頃の山崎は、俺に言ったんだ。

「そうだね」

「スイッチ、そこにあるよ」

教室の柱にあったそれを、山崎は指差した。

そのまま動こうとしない山崎に、なぜか俺がそこに行って、エアコンのスイッチを入れたんだ。

教室の天井から冷気が吹きつけ、俺たちは顔を見合わせて、ニッと笑った。