「いや、俺も作り始めたんだけどさ、先に始めた1年は、どうなってんのかなーって」
にっこりと、俺に出来る限りの温和な表情を、精一杯浮かべたつもりだった。
「ほら、今回のメイン部分ってさ、どうやって弾を撃ち出すかってことじゃない? それをどうやってやってるのかなーって」
「鹿島が考えたので、俺たちには答えられません」
パソコン画面で見た、彼の企画書を頭に思い浮かべる。
「そっか。いや、俺も出力調整をどうしようかなーって、いま考えてて……」
「鹿島が考えたので、俺たちには分かりません!」
固く口を閉ざし、真っ赤な顔をしたこの男子の周りに、1年どもが集まっている。
俺は自分の頭で、必死になって考える。
これは、本当に内容が分かっていないのか、それとも、俺に話したくないだけなのか。
いま俺の目の前にいるのは、コテの使い方が分からなくて、床を焼いた1年男子だったことを、思い出した。
「おまたせー!」
にぎやかな声が、俺の次のセリフを遮った。
山崎と鹿島を含む数名が、両手にいっぱいのコンビニ袋を抱えて戻ってくる。
「なんだよ吉永、ついにこっちに来たのか?」
山崎はジュースやアイス、お菓子の入った袋を机に置いた。
教室では最近、自分から声をかけてくることもないくせに、ここでも大事な話はスルーか。
「お前も食う?」
「いらない」
山崎はたったいま、俺に差し出したばかりのアイスの袋を開けると、自分でかじりついた。
他に何も言うことがないのなら、俺にも言うことはない。
「吉永部長、見にきてくれたんですか?」
鹿島は慌てたように、この場を取り繕う。
その態度が、俺にはどうしても気に入らないんだ。
「見になんて、来るわけねーだろ。お前らに興味なんかあるか」
俺は深く息を吐き出して、それから笑った。
「あんだけ大げさな取材がきて、やっぱ『出来ませんでしたー』じゃ恥ずかしいだろ。部長は俺なんだし。ちゃんと進捗状況ぐらいは、報告に来いよ」
ずっとため込んできた思いが、次々と言葉になって、外へ出る。
「そもそも、ここが本当の部室か? 違うだろ。俺だって一応は、1年が自分たちでロボコンに出るって決めた以上、お前らの心配はしてるんだ。企画書は、確かに勝手に見たけど、まぁアレで大丈夫かなって、思ってるけど、それでも何か困ってることがあったりなんかしたら、間に合わないとかなったら、やっぱりその責任は俺に来るワケで……」
途中から、自分で自分が何を言ってるのか分からなくなって、言葉に詰まる。
「それで、マシンの制作は、うまくいってんのか?」
「なんだお前。自分のマシンが行き詰まってんのか?」
山崎は笑った。
「だったら、素直にそう言えばいいだろ。1年で余ってんのいるから、貸してやろうか?」
「だから、違うって!」
自分の顔が真っ赤になっているのは、恥ずかしいとかじゃなくて、コイツの空気の読めなさに、腹が立っているせいだ!
「俺は大丈夫なの! 俺のことは問題ないの! 俺は、1年の心配をしてんの!」
間抜け面をした山崎は、シャリシャリとアイスを食っている。
鹿島と目が合った。
「自分たちできっちり、期限までにちゃんと仕上げとけよ!」
そう怒鳴りつけて、背を向けた。
何がマシン制作に行き詰まってんの? だ。
お前らの方こそ、行き詰まってるんじゃないのか?
あんな何の役にも立たない1年を貸し出されたって、お前らのお荷物は、俺にとっても最大のお荷物だ。
そんなもんは、いらねぇよ。
こっちは本気でやってるんだ、遊びで群れてふざけながらやってる連中と、一緒になんか、されてたまるか!
にっこりと、俺に出来る限りの温和な表情を、精一杯浮かべたつもりだった。
「ほら、今回のメイン部分ってさ、どうやって弾を撃ち出すかってことじゃない? それをどうやってやってるのかなーって」
「鹿島が考えたので、俺たちには答えられません」
パソコン画面で見た、彼の企画書を頭に思い浮かべる。
「そっか。いや、俺も出力調整をどうしようかなーって、いま考えてて……」
「鹿島が考えたので、俺たちには分かりません!」
固く口を閉ざし、真っ赤な顔をしたこの男子の周りに、1年どもが集まっている。
俺は自分の頭で、必死になって考える。
これは、本当に内容が分かっていないのか、それとも、俺に話したくないだけなのか。
いま俺の目の前にいるのは、コテの使い方が分からなくて、床を焼いた1年男子だったことを、思い出した。
「おまたせー!」
にぎやかな声が、俺の次のセリフを遮った。
山崎と鹿島を含む数名が、両手にいっぱいのコンビニ袋を抱えて戻ってくる。
「なんだよ吉永、ついにこっちに来たのか?」
山崎はジュースやアイス、お菓子の入った袋を机に置いた。
教室では最近、自分から声をかけてくることもないくせに、ここでも大事な話はスルーか。
「お前も食う?」
「いらない」
山崎はたったいま、俺に差し出したばかりのアイスの袋を開けると、自分でかじりついた。
他に何も言うことがないのなら、俺にも言うことはない。
「吉永部長、見にきてくれたんですか?」
鹿島は慌てたように、この場を取り繕う。
その態度が、俺にはどうしても気に入らないんだ。
「見になんて、来るわけねーだろ。お前らに興味なんかあるか」
俺は深く息を吐き出して、それから笑った。
「あんだけ大げさな取材がきて、やっぱ『出来ませんでしたー』じゃ恥ずかしいだろ。部長は俺なんだし。ちゃんと進捗状況ぐらいは、報告に来いよ」
ずっとため込んできた思いが、次々と言葉になって、外へ出る。
「そもそも、ここが本当の部室か? 違うだろ。俺だって一応は、1年が自分たちでロボコンに出るって決めた以上、お前らの心配はしてるんだ。企画書は、確かに勝手に見たけど、まぁアレで大丈夫かなって、思ってるけど、それでも何か困ってることがあったりなんかしたら、間に合わないとかなったら、やっぱりその責任は俺に来るワケで……」
途中から、自分で自分が何を言ってるのか分からなくなって、言葉に詰まる。
「それで、マシンの制作は、うまくいってんのか?」
「なんだお前。自分のマシンが行き詰まってんのか?」
山崎は笑った。
「だったら、素直にそう言えばいいだろ。1年で余ってんのいるから、貸してやろうか?」
「だから、違うって!」
自分の顔が真っ赤になっているのは、恥ずかしいとかじゃなくて、コイツの空気の読めなさに、腹が立っているせいだ!
「俺は大丈夫なの! 俺のことは問題ないの! 俺は、1年の心配をしてんの!」
間抜け面をした山崎は、シャリシャリとアイスを食っている。
鹿島と目が合った。
「自分たちできっちり、期限までにちゃんと仕上げとけよ!」
そう怒鳴りつけて、背を向けた。
何がマシン制作に行き詰まってんの? だ。
お前らの方こそ、行き詰まってるんじゃないのか?
あんな何の役にも立たない1年を貸し出されたって、お前らのお荷物は、俺にとっても最大のお荷物だ。
そんなもんは、いらねぇよ。
こっちは本気でやってるんだ、遊びで群れてふざけながらやってる連中と、一緒になんか、されてたまるか!