こっそり中をのぞくつもりでいたのに、入り口付近まで来たとたん、あっさりと見つかる。

「わ、部長。こんにちは」

名前も知らない部員が、俺に挨拶をする。

彼はそそくさと中へ戻ると、俺が来たことを全員に伝えた。

小さな倉庫の中に緊張感が走るのが、目に見えるようだ。

「調子はどう?」

中をのぞくと、そこに鹿島はいなかった。

山崎の姿もない。

本当に新入りの1年生たちだけで、集まっていたところだった。

「え、えぇ、まぁなんとか」

彼らは顔を見合わせ、恐る恐る口を開く。

じっとりとした視線が、俺に集中していた。

「そっか。ちょっと心配になって、見にきてみただけなんだ。上手くいってる?」

倉庫の中は綺麗に片付けられ、鞄や荷物、工具や作業に必要な道具は、専用の棚に収められていた。

どこからかもらってきたのであろう、ぼろぼろの机の上には、お菓子や雑誌、漫画なんかも転がっている。

すっかり居心地のいい、自分たちのたまり場を完成させているようだった。

俺は中へと足を踏み入れる。

「へぇ、もう試作機が出来てるの? すごいね」

マシン自体は、大きなものじゃない。

企画書を見たので、大体の設計は分かる。

1年の一人が、さっとそれを持ちあげた。

「いえ、まだ、動かしたことはなので」

腕に抱え込むようにして、俺の目から隠す。

心の中で、ため息をついた。

別に敵情視察に来たわけじゃない。

本当に、単純に、ただ様子が気になって、来ただけだったのに。

そのすぐ隣には、公式サイズの的が置いてあった。

俺はその前にしゃがみこむ。

「これは動くの?」

出ていた的の一つに指で触れたら、それはぽとりと外れて、箱の中に落ち込んだ。

「まだちゃんと出来てないので、触らないで下さい」

「あ、ごめんね」

慌てて両手を背後に回す。

ほとんど顔を合わせたこともない、話したこともない彼らと、どう接していいのかが分からない。

そっか、俺が自分一人でロボコンに参加するって決めたことを、みんな知っているんだったっけ。

だったら俺は、やっぱり敵じゃないか。