気がつけば、俺はただテーブルの上に置いた球を発射するだけの遊びに、夢中になっていた。

完全下校30分前のチャイムに、ようやく時間の経過を知る。

やべ、早く片付けて、帰らなくっちゃ。

発射スイッチを入れるタイミングの切り替え、もしくはシリンダーの動きを調整する方法を考えないとな。

ただ単に電池につないだだけのシリンダーは、単純なピストン運動を無制限にくり返していた。

空中を飛ばすのと、机の上を滑らすのとでは違うだろうけど、出力だけは予想通りだ。

そこまで考えておいてから、ため息をついて立ち上がる。

床に散乱した球を拾って片付けると、シリンダーを棚に戻して鍵をかけた。

そういえば山崎のやつ、本当に今日も来なかったな。

別に一人でやることが嫌なわけじゃないし、嫌いじゃない。

だけど、俺のことを一番に理解し、いつも一緒にいてくれるものだと思っていた親友が、こんなにもあっさりと離れていくとは、思いもしなかった。

今の山崎が、俺のことをどう思っているのかは分からない。

だけど、俺の中では、山崎は山崎のままだった。

朝の教室、山崎はいつもと変わらない。

挨拶をすれば、普通に挨拶を返す。

だけど、そのまま素通りして、すぐに別の奴らのところへ行く。

そのことに、なにか問題があるわけじゃない。

これまでにだって、そんな時はあった。

部活のこととか、マシン制作のこととか、そんな問題がこの世に全く存在していないかのような顔をして、普通に接してくる。

だけどそのことを俺もあいつも、あえて口に出して言わないのは、お互いにどこかで避けているからだ。

「じゃあな、おつかれー」

放課後の開始と共に、山崎は飛び出ていく。

行き先は決まっている。

1年の拠点にしている、体育館倉庫だ。

あいつは自分より下の人間を作って、そこでふんぞり返って偉そうにしているのが、好きな奴だったんだな。

迷惑な男だ。

そんな一面があったなんて、初めて知ったよ。

俺はあんなことでケンカしたなんて思ってないのに、山崎にとっては、そうじゃないみたいだ。