「先輩たちも、頑張ってください」

取り巻き連中と共に、学校へ戻って制作を続けるようだ。

俺はそんな背中を見送り、さらなる闘志を燃え上がらせていた。

あの生意気な1年軍団には、絶対に負けられない。

こんなマイナー日陰部にわざわざ入って引っかき回すくらいなら、最初っから自分たちで、勝手にやってりゃよかったんだろうが!

「あぁ、萌花ちゃん!」

「は?」

山崎は涙をたっぷりと浮かべた目で、1年軍団を追っていた。

あの集団の中でも、頭一つ背の高い鹿島以外、俺は1年の名前なんて覚えていない。

「誰だよ、萌花ちゃんって」

「うるせー、お前なんかに、誰が教えるか」

「あっそ。ほら、さっさと帰って、俺らも続きやるぞ」

そうやって、学校の校門まではすんなりと戻って来たのに、山崎は買い忘れを思い出したとか何とかいって、またホームセンターに戻りたいとか言い始める。

「ちょ、マジで先に理科室戻ってて。俺も後から行くから。あ、もし遅くなっても、気にすんな。俺は平気だから。全然大丈夫だし、ちゃんと生きてる」

「なんだよ、それ」

何を言っているのか、意味が分からない。

それでもまだ、もぞもぞ言って動こうとしないから、俺は仕方なく山崎をその場に残したまま、理科室に戻った。

どうせあいつのことは、期待する方が間違っている。

にぎやかな放課後の音が響く階段を、ゆっくりと上る。

手にした買い物袋の重さが心地いい。

こんなにわくわくしているのは、いつぐらいぶりだろうかと思う。

ガラリと開く理科室の扉が、俺を待っていた。

手に入れた部品の、サラリとした感触を確かめる。

わずかにひんやりとする、この冷たい金属の肌触りが、何よりも好きだった。

俺は自分のマシンの、全体像を思い浮かべる。

レールはどうやって敷こうか、長さはどれくらい? 

この辺りで一本切って、目印をつけてつなげよう。

まだ何もはっきりとした形になっていないそれを、頭の中で思い描く。

本体の大きさは、小さくて軽めにするけど、足回りはしっかりさせたいから、タイヤは4本かな。

2本のレールの幅と長さに合わせて、もう少し部品を買い足さないといけないかもしれないな。