「あ、部長さんですか?」

記者の一人が、こちらを振り返った。

「後輩さんたちが頑張っていますね、アドバイスとか、何か協力してやっていく予定ですか?」

その言葉に、俺は脳みそをフル回転させる。

こんなところで都合よく、いい子ちゃん記事なんて、誰が書かせるかよ。

「いえ、彼らは彼らで勝手にやってますので、特に俺たちは何も手伝うつもりはないし、ほとんど口も利いたりしないので、関係ないですよねー。ニューロボコンに参加したいって話しは聞いてましたけど、参加申請まで済ましていたことは、知らなかったです。なんの相談もなかったんで」

そう言った俺の体を、山崎はドンと押しのけた。

「しっかりとした後輩が入って来てくれて、とても頼もしく思っています」

取材記者の態度は一変して、山崎に向かう。

「いい後輩でしょ?」

「はい。廃部の危機を救ってくれて、本当に感謝してます」

「廃部の危機? もしかして、彼らが入部していなかったら、この電子制御部は、廃部になっていたんですか?」

わざとらしく、驚いた表情を作った記者の目が輝く。

「そうなんですよー。部のこれからも、大会の参加も、全力100%応援しています!」

記者に促されて、「部長さんも一枚」なんて言われ、機嫌良く山崎は写真に撮られている。

ヘン顔とかまでして、いい気なもんだ。

「やった。これで俺も、全国デビューかな」

くだらない。

こんなくだらないことで話題にされたって、奴らはまだ何の結果も残してないじゃないか。

参加を決めただけなんだぜ? 

それに第一、他人の評価にのっかっての評価だなんて、こんなの自分の実力でもなんでもないし、俺には頼まれたってゴメンだ。