昼休みになった。いつもなら、なんとなく集まって昼飯を食べているメンバーのところに、今日は行きたくない。

とにかく、行きたくない。

ただそう思っただけだ。

一緒に飯を食う仲間を求めて他を当たるのも、どうでもよくなってきた。

さっさと終わらせて、時間を有意義に使おう。

そう思って、一人で弁当を食い始めただけなのに、山崎はそんな俺を、呆れたように見下ろした。

「お前さぁ、なに一人で飯食ってんの?」

すぐに反論しようと思っても、口の中が一杯だからしゃべれない。

「だっせーな、他に友達いないわけ?」

詰め込みすぎた。

あと5回はかまないと飲み込めない。

お茶で流し込む余裕さえない。

山崎は盛大なため息をついて、目の前に腰を下ろした。

「お前、本当に俺がいてやらないとダメだね」

「うるせぇ、お前こそなに勘違いしてんだよ!」

俺は口の中のものを、一気に流し込んだ後で、水筒を机に叩きつけた。

「は? 一人で弁当食ってる奴が、なに言ってんだよ」

「弁当くらい普通一人で食うだろ!」

「食わねぇって、普通はよ!」

「だから、お前の普通って、なんなんだよ!」

「そこの男子うるさーい」

甲高い声が鋭く響いた。

このクラスを実質的に仕切っている、女子連中がこっちをみて笑った。

弁当どころか、あいつらは一体何食って生きてんだと思うくらい、机の上にいっぱいのお菓子を広げている。

そんな連中が、さらに高い声で手を叩きながら笑った。

俺たちは額をくっつける。

「だからさ、なんで一人で食ってんの」

「なんとなく」

「なんとなくなんだよ」

「そんな気分だっただけ」

俺は残りの弁当をひっそりと平らげ、山崎は買って来たパンをこっそりとかじった。

「じゃ、お先に。がんばれよ」

「おう」

俺は教室を抜け出した。

抜け出したところで、どこに行く予定もなければ、したいことも、しなければならないこともなかった。

することがなさすぎて、校舎を1周する。

1周では早く終わりすぎるので、隣の校舎に渡って、学校全体の建物の中を、もう1周してくる。

教室に戻った。

「なぁ、そういえば、アジカンの新曲聞いた?」

「まだ」

 俺は携帯の検索画面を取り出して、山崎に教えてやる。

「やっぱいいよな」

「おう、最高だね」

 放課後が来て、俺は理科室へ向かった。