何度も何度も繰り返し、もうとっくに聞き飽きた音楽のミックスリストを、また聞いている。

そろそろ新しい曲を入れたいけど、どんなものが『いい曲』と思えるのかが、自分でもすっかり分からなくなってしまった。

手元のパッドには、目新しい新曲もない。

大きな笑い声が聞こえて、振り返った。

いまだ見慣れぬ1年軍団の中に、よく知るその横顔を見つける。

「奥川、お前なにやってんの?」

彼女はどこから手に入れたのか、電子部品の専門書をテーブルに広げていた。

「何って、マシン作りを考えてんじゃない」

何でもないことのように、平気でそんなことを言う。

「なんでお前?」

「私じゃダメなの?」

彼女の眉間に、しわが寄る。

「お前、生徒会は?」

そうやって聞いたのに、今度は完全に無視だ。

俺はその輪の中にまだ入れないのに、なんで奥川は入ってる? 

「ういーっす。お、やってるね」

やがて現れた山崎までもが、簡単にそこに加わって、わいわいと始めた。

どうして? なぜ? 

なんでそんな、普通にしていられんの? 

俺は外を見ているフリをしながら、イヤホンの音を消し、背中で彼らの声を必死に聞いている。

どうやら制作班は、マシン班と的班に分かれたようだ。

山崎は的作り班らしい。

1年の女子と男子、4人に囲まれて、鼻の下を伸ばしている。

「じゃ、始めよっか。まずは……」

「おい! 山崎!」

俺はついに我慢出来なくなって、そう叫んだ。

絶対聞こえているはずなのに、全く反応がない。

俺は奴らの広げている設計図らしき落書きの上に、バシンと勢いよく手を置いた。

「山崎、ちょっと話しがある」

渋るこの男を、俺は無理矢理、準備室に引きずり込む。

「お前、なにやってんだよ」

「なにが?」

呼び出された山崎は気もそぞろで、まともに話し合おうという気もない。

俺なんかの相手をするよりも、早く戻りたいみたいだ。

「俺はあいつらが嫌いだって、言っただろ!」

「は? そんなこと、聞いてねーよ」

「お前、分かってやってるよな」

「何が」

じっと見つめる俺の視線から、山崎はふっと目をそらせた。

俺が好きなものは、こいつも好きだったし、こいつが楽しいと思うものは、俺も楽しかった。

だから俺が嫌いなものも、こいつには嫌いであってほしいし、とにかく今のこの俺の状況を、分かってほしい。

ただそれだけだ。