俺の都合とか気持ちなどとは全く関係のないところで、鹿島たちのロボット制作は始まった。

今回の競技は、ランダムに飛び出す5つの的に向かって、卓球の公式球30球をどれだけ多く当てられたかで、得点で競う。

要するに、もぐら叩きのようなものだ。

センサーで的を感知して、そこに向かって正確にボールを投げる。

センサー性能と、照準の問題だ。

機体の総重量とサイズ、予算は決められているから、それほど高性能な部品はつけられない。

鹿島たちは、まずはルールブックに記された、公式の『的』の方を作ろうとしているようだった。

全く気にならない、といえば、嘘になる。

俺だって谷先輩に言われて、一度は出場を考えた身だ。

内容の難しさに加え、彼らを心配する気持ちだって、少しはある。

断崖絶壁の、その先に火の海があるとも知らずに突き進む、バカを見ているような気分だ。

それくらいには思ってやってるのに、1年軍団にとっては、俺はまるで教室に迷いこんだハエかカメムシぐらいの存在でしかないらしい。

最初の挨拶は、する。

それからしばらくの間は、ちらちらとこちらの動向をうかがっているけれども、やがてすぐにその興味も失せ、自分たちの世界に戻ってしまう。

話しかけようにも話しかけにくいし、向こうからも何も言ってこない。

そんなザラザラとした空気感に、若干イライラしながら、俺は両耳にイヤホンをさして、窓の外を見ている。

正直、いくらここからの風景が好きだとはいえ、毎日毎日一人でながめているのにも、限界がある。

俺はこの教室でどうやって、いままで時間を潰していたんだっけ。

「潰す? ちがうな」

思わず声なって出てしまった言葉に、自分で自分が恥ずかしくなる。

聞かれてないよね? 

後ろを振り返って確認してみたいけど、それも怖くて恥ずかしくて出来ない。

なにやってんだろ、オレ。