「特に活動日が限定されてるとか、理科室の使用許可が火金に限られてるって、わけでもないんですか?」

俺がどう答えようか考えたその一瞬の隙をついて、奥川が割り込む。

「基本的にはやっぱり火金だよ! 使用許可は理科室の年間使用ってことになってるから、そのなかで活動日を決めるのは、それぞれの裁量ってことになるけど」

「そうですか」

鹿島は何かを考え込み始めた。

やめてくれ、俺はお前に来てほしくない。

「まだ入学したてだろ? 通学とか、学校生活に慣れるまでも、それなりに時間かかるし大変だと思うからさ、無理する必要はないんだって」

「そうだよ、鹿島くん。仮入部って、そういうことだから」

奥川が「ねー」といってのぞき込んだのを、俺も同調して「ねー」と返しておく。

その瞬間、奥川は明らかにムッとした。

「じゃあ活動日時は、基本的には限られないってことですね」

「そんな最初から無理すんなって」

「そうだよ、彼女とかいないの?」

奥川の発言に、鹿島は薄い笑顔を浮かべた。

「いないの? いるの? えっ、いないんだぁ~、意外!」

「部長は今日は、理科室に行きますか?」

「いや、行かない」

「分かりました。じゃあまた、金曜日ですね」

鹿島が水やりをしていたホースを片付け始める。

校舎の時計が、始業時刻に迫っていた。

「いいじゃない。今日なら別に、特になんの用事もないでしょ? 理科室に行ってあげたら?」

「じゃあな、鹿島」

俺は歩き始めた。

鹿島は完全に片付け態勢に入っている。

奥川は慌てて俺の後を追いかけてきた。

「ちょ、どういうことよ! なんで無視すんの?」

「別に無視はしてないって」

「したじゃない」

「してねーって」

そんなことよりも、鹿島、だ。

マジで来てもらっては困る。

新歓で載せた活動日は、確かに週2の火金だったが、俺と山崎は毎日のようにそこに集まって、時間を潰していた。

そんな大切な空間に、他の奴らになんて、踏み込まれたくはなかった。