鹿島から、年間活動計画書を生徒会本部に提出したと、聞いた後のことだった。
放課後の廊下で、俺はようやく奥川を捕まえる。
廊下を並んで一緒に歩くのも、久しぶりだ。
「マジで本部が受け取ったの?」
「そうだよ」
「受理された?」
「されたよ」
鹿島の提出した計画書だ。
いくら彼女が部のため俺のため、生徒会で頑張ってくれているといっても、コレばかりは阻止しておきたい。
「いいじゃない。1年の子たちが頑張ってるんだから、認めてやりなよ」
「アレさ、書いたの、実は俺じゃないんだ。それっていいの?」
「部長印押してあったじゃない。許可したってことでしょ」
「そんなの、本部の会議で通るわけ? 無理っしょ、そんな無理して頑張ってくれなくても、いいよ」
「大丈夫、他も部も必ずしも部長が自分で書いてるって、わけじゃないから」
奥川は相変わらずの早足だった。
これはある意味、コイツの昔からのクセみたいなもんだ。
何をそんなに急いでいるのだろうかと、いつも思う。
「鹿島くん、すごくいい子だよね、びっくりしちゃった。あんないい子、逃がしたらもったいないよ。きっと役にたつよ、電子制御部の救世主だよ」
そんな風に奥川から言われると、ますます余計にムカツク。
「そうかぁ~? 口だけで実力がって感じだけどな」
ふいに奥川が振り返る。
目があった。
突然、彼女は笑い転げる。
「何がおかしいんだよ!」
「ううん、別に」
涙目になって笑うその格好は、彼氏に見せるような姿じゃないだろ。
まぁ、別にいいんだけど。
「私も部活入ろっかな、電子制御部」
「え、マジで?」
「吉永が部長になったし。生徒会優先で時々しか顔出せなくっても、文句言う人はいないよね」
「いない、いないよ。つーか、俺が言わせないし」
やった。
うれしい。
「入部届け、出す?」
「う~ん、また後でね。考えとく」
彼女は相変わらずの早足のまま、天井を見上げるとそう言った。
「ま、多分出すとは思うけど」
廊下の向こうに、鹿島の姿が見えた。
うちに入部を希望している、取り巻き連中に囲まれている。
「鹿島く~ん!」
奥川はそこへ向かって、手を振った。
それに鹿島は、ぺこりと頭を下げて応える。
なんだよ、なれなれしい奴だ。
「今から理科室に行くの?」
「あ、いえ、一度行ったんですけど、鍵が開いてなかったので、職員室にとりに行こうかと」
鹿島の目が、おずおずと俺を見下ろした。
部室である理科室の鍵は、部長である俺が持っている。
「すみません。お二人で、何かお話があったんですよね。先に理科室の前で待っています」
奥川の肘が、俺の腕をつつく。
「あぁ、悪いけど、先に行っててくれる?」
ズボンのポケットから取りだそうとしたそれは、ほつれた糸に絡まってひっかかった。
なんとか引っ張りだそうとしても、上体を半分ひねったような態勢からだと、非常に扱いにくい。
放課後の廊下で、俺はようやく奥川を捕まえる。
廊下を並んで一緒に歩くのも、久しぶりだ。
「マジで本部が受け取ったの?」
「そうだよ」
「受理された?」
「されたよ」
鹿島の提出した計画書だ。
いくら彼女が部のため俺のため、生徒会で頑張ってくれているといっても、コレばかりは阻止しておきたい。
「いいじゃない。1年の子たちが頑張ってるんだから、認めてやりなよ」
「アレさ、書いたの、実は俺じゃないんだ。それっていいの?」
「部長印押してあったじゃない。許可したってことでしょ」
「そんなの、本部の会議で通るわけ? 無理っしょ、そんな無理して頑張ってくれなくても、いいよ」
「大丈夫、他も部も必ずしも部長が自分で書いてるって、わけじゃないから」
奥川は相変わらずの早足だった。
これはある意味、コイツの昔からのクセみたいなもんだ。
何をそんなに急いでいるのだろうかと、いつも思う。
「鹿島くん、すごくいい子だよね、びっくりしちゃった。あんないい子、逃がしたらもったいないよ。きっと役にたつよ、電子制御部の救世主だよ」
そんな風に奥川から言われると、ますます余計にムカツク。
「そうかぁ~? 口だけで実力がって感じだけどな」
ふいに奥川が振り返る。
目があった。
突然、彼女は笑い転げる。
「何がおかしいんだよ!」
「ううん、別に」
涙目になって笑うその格好は、彼氏に見せるような姿じゃないだろ。
まぁ、別にいいんだけど。
「私も部活入ろっかな、電子制御部」
「え、マジで?」
「吉永が部長になったし。生徒会優先で時々しか顔出せなくっても、文句言う人はいないよね」
「いない、いないよ。つーか、俺が言わせないし」
やった。
うれしい。
「入部届け、出す?」
「う~ん、また後でね。考えとく」
彼女は相変わらずの早足のまま、天井を見上げるとそう言った。
「ま、多分出すとは思うけど」
廊下の向こうに、鹿島の姿が見えた。
うちに入部を希望している、取り巻き連中に囲まれている。
「鹿島く~ん!」
奥川はそこへ向かって、手を振った。
それに鹿島は、ぺこりと頭を下げて応える。
なんだよ、なれなれしい奴だ。
「今から理科室に行くの?」
「あ、いえ、一度行ったんですけど、鍵が開いてなかったので、職員室にとりに行こうかと」
鹿島の目が、おずおずと俺を見下ろした。
部室である理科室の鍵は、部長である俺が持っている。
「すみません。お二人で、何かお話があったんですよね。先に理科室の前で待っています」
奥川の肘が、俺の腕をつつく。
「あぁ、悪いけど、先に行っててくれる?」
ズボンのポケットから取りだそうとしたそれは、ほつれた糸に絡まってひっかかった。
なんとか引っ張りだそうとしても、上体を半分ひねったような態勢からだと、非常に扱いにくい。