どこをどう走ったのか知らないけど、気がつけば大きな川の河川敷に来ていた。

一気に土手を駆け上がる。

「好きだぁ~!!」

遊歩道を行く人たちが、笑いながら俺を見ているのを知っている。

だけど、今の俺は無敵だった。

「待てって、吉永!」

なんでこういう時に追いかけて来るのは、やっぱり山崎なんだろうなーとか、今はそれすら思わないほど、俺は強い。

普段、運動なんかほとんどしていないせいで、すぐに息が切れる。

それは山崎も同じだった。

「なんで走って逃げんだよ」

「逃げてねーよ」

「逃げてるし」

立ち止まって、互いに呼吸を整える。

じんわりと額に浮かんだ汗をぬぐった。

「俺はな、いま、泣いてるんだ」

「……。あぁ、そうか。じゃあしょうがねぇな」

山崎が間抜けな顔をしている。

いつものことだけど。

俺も今はきっと、こんなふうに間抜けな顔をしているんだろうな。

「はは」

そう思うと、なんだか急におかしくなって、俺は腹を抱えて笑い出す。

山崎も笑っている。

ホント、バカだよな、俺たちって。