正の終了フラグとは結果が適切であることを意味する言葉らしい

俺はコントロールステーションゾーンに、無線LANのアンテナを置いた。

それで準備は完了。

ロボットの自律化、自動化を推奨している大会本部の意向で、手動マシンは最初っから技術点で不利だ。

そんなことも、マシンを作り終わった後から知った。

「吉永、出来たぞ」

銀色の、真っ直ぐなレールが戦場に敷かれた。

俺はそこに、戦闘マシンを置く。

スターティングゾーンに戻った。

「準備、出来ました」

審査員のチェックが始まり、すぐに白旗が揚がる。

「では、競技を始めます」

主席審査員が合図を出した。

「用意、スタート!」

下段中央に飛び出した的に、一発目を当てる。

あとは俺の動体視力と、マシン性能の問題だった。

山崎とさんざんやりあったおかげで、マシンの反応速度は分かっている。

ボタンを押したタイミングと、発射のタイムラグも体に染みついた。

上段右の的が上がる。

俺は静かにそれをスルーして、下段の的に集中する。

下段右端と左端が同時に上がった。

スティックを倒して、右に寄せる。

撃ち抜いた瞬間、すぐに左へ向かった。

マシンが倒れてしまわないよう、ギリギリまでタイヤの回転数を上げている。

よほど乱暴にしなければ、レールから外れることもない。

中央位置を示すわずかな抵抗を乗り越え、左端に向かった。

十分余裕はある。

左の的を撃ち抜いた瞬間、もう一度左端と上段右があがった。

一つ一つを丁寧に積み重ねていけば、勝利は得られるはずだった。

反応速度の限界ギリギリで撃った弾が、的を外した。

発射のタイミングが早すぎて、中央の位置まで戻り切っていなのに、撃ったのが原因だ。

左端の的が上がる。

中央から右よりのスタートが、仇になった。

左端にマシンを寄せても間に合わない。

対応の仕方は分かっている。

次の的を見送って、冷静に中央から再スタートさせればいい。

俺がマシンを中央に戻そうとした時、左端と中央の的が同時に上がった。

どっちを狙おうかと迷うその一瞬で、再び全てが狂い始める。

撃ち出した弾は、的と的の間をすり抜けた。

自分の反応速度と、マシンとのタイムラグにイラ立ち始める。

思うようになるはずのものが、思うようにならない。

どうしてこんなにもトロいのか、どうして俺の指示に素直に従わないのか、俺の何が気にくわないんだ、俺の何が悪い、何がいけない!