その日は、朝から部員全員が体育館倉庫の前に集まった。
1年の部員保護者のご厚意で、送迎の車まで出されることになった。
乗り込めるのは、マシンを運ぶ必要のある俺と鹿島だけだけど。
「こんにちは。天気がよくてよかったね」
その保護者とは、鹿島のお父さんだった。
鹿島とそっくりのイケメンで、鹿島よりもまだ背が高かった。
コイツ、まだ身長の伸びる可能性があるのか。
「今日はありがとうございます。助かりました」
工学部教授のお父さんは、「いえいえ、どういたしまして」と、完璧に紳士的な微笑みを浮かべ、後部座席のドアまで開けてくれた。
俺は鹿島と二人、そこへ乗り込む。
窓の外で見送る山崎たちに手を振って、車は出発した。
乗り慣れない高級車のシートに、おしりがむずむずする。
これから戦場に行くつもりが、捕虜となって収監されに行くみたいだ。
車内は無音で、親子の会話もなにもなかった。
俺がいるせいか?
鹿島は緊張したような横顔を向けている。
お互いに膝に乗せた大きな段ボール箱が重しのようで、逆にまたこの状況がコントの一場面のようで、話しかけていいのか、黙っている方がいいのか、それすら分からない。
「セレア学園って、行ったことある?」
「いや、初めてです」
「そっか」
移動中の約30分、車内で交わされた会話の全ては、これだけだった。
異常なまでに乗り心地のよい車は、見たこともないような立派な青い校門をくぐる。
「この学校に知り合いの先生がいてね、車を停めさせてもらえるよう、お願いしたんだ」
車から降りたとたん、高校の先生らしき人が飛び出てきて、教授に挨拶を始めた。
鹿島は慣れっこなのか、そんな大人たちを横目に、勝手に歩き出す。
「先輩、先に受付をすませましょう」
来るのは初めてだと言っていたのに、鹿島の迷うことのない足取りに先導されて、後ろを着いて歩く。
秋晴れのひんやりとした朝の校庭に、俺たちは侵入していた。
さほど気温が低いわけでもないのに、体の芯が震えている。
1年の部員保護者のご厚意で、送迎の車まで出されることになった。
乗り込めるのは、マシンを運ぶ必要のある俺と鹿島だけだけど。
「こんにちは。天気がよくてよかったね」
その保護者とは、鹿島のお父さんだった。
鹿島とそっくりのイケメンで、鹿島よりもまだ背が高かった。
コイツ、まだ身長の伸びる可能性があるのか。
「今日はありがとうございます。助かりました」
工学部教授のお父さんは、「いえいえ、どういたしまして」と、完璧に紳士的な微笑みを浮かべ、後部座席のドアまで開けてくれた。
俺は鹿島と二人、そこへ乗り込む。
窓の外で見送る山崎たちに手を振って、車は出発した。
乗り慣れない高級車のシートに、おしりがむずむずする。
これから戦場に行くつもりが、捕虜となって収監されに行くみたいだ。
車内は無音で、親子の会話もなにもなかった。
俺がいるせいか?
鹿島は緊張したような横顔を向けている。
お互いに膝に乗せた大きな段ボール箱が重しのようで、逆にまたこの状況がコントの一場面のようで、話しかけていいのか、黙っている方がいいのか、それすら分からない。
「セレア学園って、行ったことある?」
「いや、初めてです」
「そっか」
移動中の約30分、車内で交わされた会話の全ては、これだけだった。
異常なまでに乗り心地のよい車は、見たこともないような立派な青い校門をくぐる。
「この学校に知り合いの先生がいてね、車を停めさせてもらえるよう、お願いしたんだ」
車から降りたとたん、高校の先生らしき人が飛び出てきて、教授に挨拶を始めた。
鹿島は慣れっこなのか、そんな大人たちを横目に、勝手に歩き出す。
「先輩、先に受付をすませましょう」
来るのは初めてだと言っていたのに、鹿島の迷うことのない足取りに先導されて、後ろを着いて歩く。
秋晴れのひんやりとした朝の校庭に、俺たちは侵入していた。
さほど気温が低いわけでもないのに、体の芯が震えている。