イルミネーションに見とれている私を春斗は横でずっと見ていた。
その画面が一度揺れて、私は我に返る。
見れば、春斗が椅子をくっつけて私に近づいた。
近い距離に春斗が来ると顔が熱い。
暗い教室だからだろう。
画面を真剣に見つめる春斗に目を奪われた。
「いつかちゃんとこの景色見せてやるから」
「え……」
 春斗は何げない一言なのかもしれない。
でもその一言で私の感情はいろんな色をにじませながら混ざっていく。
春斗から目を離せなくなった時、春斗が私を見て笑った。
「惚れた?」
 携帯をしまってかがんでいた姿勢を戻すと余計に距離が近くなる。
からかっている春斗を見て私は目を開いて大きく首を振った。
「好きって言うのは友達としての感情であって恋愛の好きではないし。いや、好きっていう感情がわからない。熱くなったりすることはあるけどそれは……」
 自分でも整理も理解もできていない発言だとわかっていた。
でも一瞬で忘れた。
片手が私の頭をなでるように添えられる。
そのまま私に近づく。
気づけば頬に優しい感触を感じた。
それが春斗だとわかった時、私の思考は止まった。
春斗が横にいることすら忘れてしまいそうだった。
離れる春斗は私の目を一瞬だけ椅子から立った。
「ちょっと飲み物買ってくる。なんかいる?」
 春斗の普通の話し方に戸惑う私は何も頭に浮かばない。
「あ、大丈夫。今はいいや」
 春斗は頷いて教室から出ていった。
放心上体で力の入らない私は座ったまま瞬きも忘れた。
春斗にとって今の行動は何だったのか。
遠くで後夜祭の声が聞こえる。
「寂しかったのかな……」
 後夜祭のにぎやかな雰囲気を感じて私は納得したように椅子から立ち上がって鞄に荷物を詰めた。
そのまま春斗が帰る準備ができるまで待った。